現行の日本の離婚後等単独制の手続き上の明確な問題は、未成年の子どもがいても、裁判所も行政も関与することなく、子どもの親権者さえ父母のどちらか一方に定めれば離婚が出来ることである。夫婦(父母)の話し合いだけで、離婚している協議離婚が、離婚全体のおよそ9割を占めている。その弊害は、ひとり親家庭における面会交流の実施割合が3割に過ぎないこと、養育費の支払いは2割に過ぎないという事実から明白である。
協議による離婚が多い離婚の実態は、厚生労働省による「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によって明らかである。面会交流の実施と養育費の支払いが低水準にとどまる原因として、確実に関係づけられる要因は、それらの取り決め自体をしていないという事実である。
協議離婚とは、夫婦の話し合いによって行われる離婚である。実際に十分な話し合いが行われているかどうかを考える時、離婚という夫婦が何らかの理由による不和の結果として起こる行動という性質を考えれば想像ができるだろう。十分な話し合いがされている場合は、少ないだろう。未成年者の子どもがいる場合に、子どもの親権者だけを決めて、すぐにでも離婚をしたい夫婦関係が破綻した父母が多いことは容易に想像が出来る。それが、離婚手続き上、公的に認められているのであれば、差し当たって好都合だと考える父母は多いのだろう。そのような離婚の実態は、前述の厚生労働省の調査結果で浮き彫りになっている。
離婚する父母において、養育費の取り決めをしている割合は、母子世帯で54.2%、父子世帯では74.4%に上る。ひとり親世帯に占める母子世帯の割合が9割に近い実状を踏まえると過半数の離婚において養育費の支払いが取り決められていないことが分かる。さらに言えば、そのような取り決めを行わない理由は、「相手に関わりたくないから」「相手に支払う能力がないと思った」、「相手に支払う意思がないと思った」などが上位を占めている。父子世帯においては、それらに次ぐ「自分の収入等で経済的に問題がない」という理由の影響も大きいであろう。
夫婦の不和という離婚の性質、統計的な実態に基づいて、日本が国際社会に反して夫婦の協議だけで離婚を認めていることの弊害は、言い逃れ出来ないだろう。
そのような状況は、面会交流に関しても同様である。
母子世帯において面会交流の取り決めをしていない割合は70.3%、父子世帯でも66.9%になる。その理由は、養育費を取り決めない理由と同様に「相手と関わりたくない」が上位にある。母子世帯では最多。その他、「取り決めをしなくても交流できる」、「子どもが会いたがらない」、「相手が面会交流を希望しない」などの理由が挙げられている。
「取り決めをしなくても交流できる」は、父子世帯で最多、母子世帯でも「相手に関わりたくない」に次ぐ理由となる。この理由は、文字通り面会交流の取り決めをすることなく子どもが、また、別居する父母が、希望に応じて自由に父母と、また、子どもと面会交流できる事例を含んでいると思われるが、一方で、「相手と関わりたくない」と同じような相手を避ける感情から、実際は面会交流が行われない事例もあるだろう。
「相手が面会交流を希望しない」という理由もある。母子世帯では、次の「子どもが会いたがらない」という理由よりも多く、3番目の理由となる。父子世帯では「子どもが会いたがらない」に次ぐ4番目の理由となる。これは、別居する父母が本当に面会交流を希望していない事例と同居する父母の主観によってそのように受け止められている事例を含んでいると思われる。
また、「子どもが会いたがらない」という理由もある。これも実際に子どもが別居する父母を避けている事例を含むであろうが、相手を嫌う(避ける)、同居する父母の影響を受けて子どもがそのように考えている事例、また、同居する父母の都合によって、子どもがそのように考えていると受け止められている事例を含んでいることだろう。
これらの理由に母子世帯では「相手が養育費を支払わない又は支払えない」、父子世帯では「取り決めの交渉がわずらわしい」などの理由が続いている。「相手が養育費を支払わない又は支払えない」という事情は、面会交流と直接結びつけるべきではないが、個々に複雑な事情もあるのだろう。「取り決めの交渉がわずらわしい」という理由は、「相手と関わりたくない」という相手を避ける理由とも関係するだろう。
いずれにしても、「取り決めをしなくても交流できる」という理由を挙げた世帯の中などに含まれるであろう、別居・離婚後も父母の関係が比較的良好な限られた場合を除けば、離婚を父母の判断だけに任せて、離婚届けを提出するだけの手続きに委ねることは、当事者である子どもや社会全体に対して決して望ましいものとは言えないだろう。
なお、面会交流の取り決めをしない理由を見たが、実際に面会交流を実施しない理由では、母子世帯で「不詳(52.1%)」、「相手が面会交流を求めてこない(13.5%)」、「子どもが会いたがらない(9.8%)」となっている。父子世帯では「不詳(45.0%)」、「子どもが会いたがらない(14.6%)」、「相手が面会交流を求めてこない(11.3%)」となる。母子世帯、父子世帯ともに半数前後が「不詳」であり、面会交流が実施されない理由として、子どもと同居する父母の感情的な要因が大きいことなどが推測される。
面会交流が実施される頻度では、母子世帯で、「月1回以上2回未満」、「4~6か月に1回以上」、「2~3か月に1回以上」の順となる。父子世帯では「月2回以上」、「月1回以上2回未満」、「2~3か月に1回以上」の順となる。面会交流は、月1回以上2回未満が多く、それに満たない事例もある。これは、面会交流の平均が、月1回2時間程度とされる状況とも整合的である。父子家庭では、ひとり親世帯に占める割合は少ないものの、別居する母親が子どもとの頻回な面会交流(月2回以上)を希望して、父親に親権(監護権)を譲る事例も少なくないようである。
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